どうなるの沖縄知事選~沖縄と日本の未来をめぐる対談(前篇)

対談と言ってもテキストによるスマホでの交信ですが、
何にでも詳しい友人の哲っちゃんとやりとりしました。

保守陣営の一角・下地候補の出馬とりやめ、その裏取引の思惑から
「オール沖縄」の退潮、社民の瓦解、
古謝玄太(新人)と玉城デニー(現職)の激突、
「命(ヌチ)どぅ宝」、沖縄、日本の未来、、
けっこう長くなってしまった。。

のら猫寛兵衛:沖縄県の知事選挙が告示されたけど、
下地幹郎(しもじ みきお)候補の出馬ドタキャンがえげつないとSNSで炎上している。

曽倉哲:選挙の告示をわずか2日後に控えた8月25日に、突如、立候補の取りやめですからね。
直前まで選挙戦への意欲を示し、公開討論会にも出席していたのに、
急転直下の撤退。有権者や対立陣営にしてみれば、あまりに唐突すぎて、反発しますよ。

のら猫:東京の自民党が工作してる。

哲:変な動きがありましたよね。下地氏は8月25日、
自民党の鈴木俊一幹事長や西村康稔選対委員長、
自身に近い鈴木宗男参院議員らと東京都内で極秘に面会し、
4項目の「政策合意書」を交わしたんです。 

どんな合意かというと、「沖縄の子どもの貧困対策予算300億円の確保」「鉄軌道着工へのメド」「米軍普天間基地の返還期日の明記」など、下地氏側が掲げていた主要政策です。
それを自民党側が受けいれ、努力目標として合意するというのです。 

下地氏は記者会見で、「単独で戦っても当選レベルまでの支持の広がりが見えなかった。自民党側から(鈴木宗男氏を通じて)持ちかけられ、沖縄の政策を前に進めるための苦渋の決断だった」なんて言って釈明しています。 

SNSや現場で炎上しましたが、まず、 県民や対立陣営からの批判です。
玉城デニー知事陣営などが「県民を愚弄している」「東京の自民党本部が露骨に介入して選挙をかき回すのは地方自治に反する」などと言って猛反発しています。

のら猫:当然反発しますよ。 東京から政府がアメとムチで沖縄を操るという植民地の分断統治みたいなことをずっとやってきた。それと戦ってるんだから。

哲:そして支援者の混乱。 下地氏は告示日に支援者集会で涙ながらに謝罪しましたが、
支持者には動揺が広がりました。また、下地氏は撤退すると同時に、
それまで保守を2分する対立候補だった自民・維新推薦の新人・古謝(こじゃ)玄太氏へ支援を表明、その古謝氏も事前に撤退のことは「何も聞いておらず衝撃を受けた」と困惑。
保守の足並みも乱れています。

自民党側の狙いは明らかに自分たち保守の共倒れを避けることです。
前回5万票を獲得した下地氏ですから、このままなら保守票が割れる。。
それを避けるため、下地氏の出馬を取り下げさせ、候補者の一本化を図ったというわけです。 

こういう撤退劇が、有権者を置き去りにしたドタキャンだとして炎上した。 

のら猫:一本化。ま、合理的な決断ではあるようだが。。

哲:でも、その進め方、過程が、非常に異例というか、不透明でしたからね。 
まず、沖縄の現場を無視した東京の自民党本部での密室合意だということ。
現地の自民党沖縄県連や、当事者である古謝玄太候補が、完全に蚊帳の外ですからね。

下地氏は東京の自民党本部に赴いて、党中央の幹部(幹事長や選対委員長)や鈴木宗男参院議員らと
極秘に面会して出馬取りやめと政策合意を決めました。 

これはやはり批判されますよね。 県のトップを決める選挙なのに、地元の有権者や現地の党組織を置き去りにして、東京の永田町の論理、国政の都合だけで選挙の構図をひっくり返してる。
地方自治への頭越しの介入だと。

撤退条件という「4項目の政策合意」にしても、本来こういう政策は、
国が沖縄振興の観点から客観的に判断して予算をつけるべき性質のものですよ。

それを、 候補者の一本化のために出馬を諦めさせる見返りとして、国(自民党本部)が予算や政策をカードに使ったようなもんじゃないですか。そりゃ、政策や国の予算をアメにしているとか、不透明な密約だ、公正な選挙戦を歪めている、地方自治を愚弄している、などなどの批判が出てきて当然です。

下地氏は直前まで精力的に動いて、公開討論会にも出席し、現職や古謝氏とも論戦を張っていたんですからね。 下地氏の政策や主張に共感し、彼に一票を投じようとしていた有権者からすれば、
告示のわずか2日前に「勝てそうにないから、東京の自民党本部と話をつけて降ります」じゃあ、
有権者を置き去りにしたドタキャンだと炎上しますよ。

のら猫:片山さつきじゃあるまいし、この土下座には笑っちゃうんだけど。
4項目の「政策合意書」というのは古謝候補が引き継ぐの?!

哲:いえ。自民党本部が「将来的に実現を目指す」下地氏との約束(努力目標)という扱いです。

そのくせ、下地氏側は、この合意を古謝氏の支援材料として使おうとしています。 

記者会見でも下地氏は、古謝氏(42歳)のことをまだ若くて経験不足だから、
この4項目で古謝氏の政策的な弱さを補える、といったことを言っているんですね。 

下地氏は、そういう大義名分で自分の支持者に古謝氏への投票を呼びかけている
というわけなんです。

しかし、古謝氏を支える自民党沖縄県連や地元の国会議員は、国(党本部)が勝手に下地氏と結んだものと言って、この合意書に怒っています。県連は破棄しろとまで言ってるようですよ。

沖縄県知事選、自民党が仕掛けた「アメとムチ」 出馬取りやめ候補と「政策合意」結んだ裏側は 2026年8月28日 東京新聞 https://www.tokyo-np.co.jp/article/511564

「自民から持ちかけ」 沖縄県知事選の立候補取り下げ、下地氏が会見
2026年8月26日 朝日新聞 https://digital.asahi.com/articles/ASV8V3JGMV8VUTIL01ZM.html

のら猫:下地氏は古謝氏が撤退や合意書を喜ぶと思った?

哲:喜ぶ、というか、文句はないはずといったところでしょうかね。

「300億円の予算」や「鉄軌道着工」という特上のお土産を持ってきたのだから、
古謝陣営にとっても強力な材料になるはずだ、と。

下地氏は直前まで古謝氏の「未熟さ」を激しく批判していました。出馬取りやめの数日前にも、討論会で、古謝氏の看板公約(所得倍増)を「数字の根拠がない」「あなたおかしいですよ」 と徹底的に叩いていました。  

のら猫:直前まで自分のことをボロクソに言っていた下地氏が、
ほれ、お土産だ、と言って東京との合意を手に、突然応援を申し出てきた、、

哲:古謝氏は「自分は何も聞いていない」 と困惑することになります。 
下地氏の計算とは裏腹に、告示直前に混乱を招く結果となったのです。

のら猫:計算だか何だか。私は、計算は別なところにあると見てるんだけど(笑)。

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ところで古謝氏は遊説で「誰かのせいにするのはもうやめよう」というようなことを言ってる。
アメリカや国を非難するのをやめて、沖縄が頑張るのだと言いたいだろう。
でも、沖縄人が頑張って働いて収める税金は国が持って行って国がその再交付をして、政治、統治が行われるわけだから、国がいい政治、いい統治をしないのなら国を非難しないことには始まらない。いくら沖縄でみんなして頑張っても意味がない。沖縄とて法律で縛られており、その法律は国が作っているわけなんだから、沖縄にとってよくない法律が施行されるなら国を批判するしかない。それを「誰かのせいにするのはやめろ」とは。。

これで、古謝玄太が選挙の混乱を「党中央や下地氏」のせいにしたら自己矛盾になってしまう。。

哲:古謝氏のその発言は、明らかにオール沖縄や玉城デニー知事の政治姿勢との
対立軸を掲げようという演出ですね。

玉城知事側が基地問題などをめぐって、国やアメリカに対して徹底的に抗議し、批判する姿勢であるのに対し、古謝氏は「これまでの「国 対 沖縄」という対立・批判の構図で、沖縄の経済や暮らしは前に進まなかったーー国と対立して批判し続けるのではなく、協調して国を動かすべきだ」と言いたいわけですよ。 

つまり、不満を言うだけ、批判に終始するだけの政治から脱却し、国とのパイプを使って現実的な利益を引き出すべきだという、保守系お得意のスタンスですよ。

のら猫:それにしてもこの「合意」が「努力目標」というところがいかにもインチキ臭いね。
絵に描いた餅に釣られたのかと、下地が阿呆のように見えませんかね。

哲:いや、下地氏という人物は決して「阿呆」じゃありませんよ。
むしろ百戦錬磨の策士、選挙のプロと言われてきた人物です。
それだけの手練れが、なぜ今回の「インチキ臭い努力目標」で降りてしまったのか。 
追い詰められた者の政治的な計算ですよ。とにかく、大義名分(降りる口実)が欲しかったのです。

情勢調査では、下地氏の支持は広がりを欠き、このまま出馬しても有力候補の中で最下位の落選となり、さらには保守票を割って現職を利して、保守敗北の戦犯になる可能性が極めて高い状況でした。 つまり、ほぼ政治生命の終わりということ。

ですから、下地氏としては選挙戦から名誉ある撤退をするための、もっともらしい理由(大義名分)がどうしても必要だったのです。

つまり、「努力目標」にすぎず、絵に描いた餅だと分かっていても、「国にこれだけの約束をさせのだから、私は沖縄のために身を引くのだ」というもっともらしいストーリーさえ手に入れれば、下地氏にとっては目的達成だったと言えます。 

のら猫:渡りに船だった。

哲:下地氏は過去に自民党を離党させられており、現在は無所属です。彼の最終的な目標は、知事になること以上に、国政への復帰や、自民党との関係修復にあると思われます。 

一方、自民党本部(中央)にとって、今回の知事選は保守一本化が至上命令でした。
だから、下地氏には告示直前に降りてもらった。その見返りに、裏では
「この先あんたが国政に戻る際には自民党が便宜を図りますから」みたいな、
政治生命を繋いであげるという密約を交わしたような感じがしますね。 

これで下地氏にとっては、知事選での自らの惨敗も保守陣営敗北の戦犯になることも回避でき、
国に巨額の政策を約束させたというポーズを取りつつ、自民党本部には貸しを作って復党と国政復帰の道筋をつけるという、とても美味しい取引きだったわけです。  

のら猫:下地という人は私の記憶違いでなければ、確か建設会社の御曹司かなんかでいかにも利権政治家みたいな感じで、良い印象がないんですが。

哲:その記憶の通り、沖縄の大手建設会社「大米建設」の創業者一族です。
国会での野党議員への野次や政権への立ち回り、、強烈な個性と毀誉褒貶のある政治家です。 

その下地氏が今回、沖縄現地をすっ飛ばして東京の自民党本部と直接取引を行った背景には、
自民党沖縄県連と東京の党本部との、何十年という深い確執とねじれの歴史があります。 

確執の根本原因は国益(日米安全保障)と地方の民意の板挟みということ。東京の自民党本部にとって、沖縄は日本の安全保障(米軍基地の維持)を進めるための最重要拠点です。国政の論理では、基地問題で国と対立しない、中央の言うことを聞いてくれる知事の誕生が至上命令となります。 

一方、地元の自民党沖縄県連に属する議員たちは、東京と同じ自民党員ではありますが、
同時に沖縄県民でもあります。 

辺野古移設などでも、地元の激しい基地反対世論と、東京からの「移設を推進しろ」という圧力の
板挟みで苦しんできました。

のら猫:2009年に民主党と社民の連立政権ができて鳩山首相が「最低でも県外」なんて言って
普天間基地が沖縄から出ていくという期待感で沖縄が舞い上がってた頃なんか、
自民党候補も沖縄では「県外移設」が公約だったりしたからね。
でも、東京の党本部から呼び出しを喰らって、手のひら返しを強要され、
全員「辺野古容認」になっちゃった。

哲:予算(沖縄振興策)を人質に取られて公約撤回を迫られて降参したんですよね。「平成の琉球処分」とも言われるらしい。その過程で、地元県連には「東京は沖縄の痛みを理解せず、選挙の時だけ都合よく命令してくる」という根深い不信感が植え付けられたと思います。 

この中央と地方の確執が決定的になったのが、2014年の知事選です。
保守と革新が合体した「オール沖縄」が誕生したのです。

当時、自民党沖縄県連の重鎮であり那覇市長だった翁長雄志(おなが たけし)氏が、
東京の自民党本部の辺野古推進方針に猛反発。
自民党を飛び出し、共産党や社民党などの革新勢力、さらには地元の保守系経済界を巻き込んで
保革相乗りの「オール沖縄」を立ち上げ、知事に当選したのです。 

東京の党本部からすればとんでもない身内の裏切りであり、
地元県連からすれば中央の強権政治が生んだ必然的な反乱でした。
これ以降、沖縄の保守陣営は「親・党本部(官邸主導)派」と「対話重視の地元派」で
大きく引き裂かれることになります。 

下地幹雄氏も、この「中央と地方のねじれ」を最大限に利用して生き残ってきた政治家です。 

のら猫:もともと自民党だったのに、離党して、国民新党とか日本維新の会とか、渡り歩いてきたんだよね。 

哲:そうです。彼は国政(東京)での人脈(菅義偉氏や鈴木宗男氏など)が非常に強く、
「沖縄県連を無視して、東京の最高権力者と直接交渉して沖縄に予算を持ってくる」
という手法を繰り返してきました。 

地元の自民党沖縄県連からすれば、自分たちが地道にドブ板選挙をしている横で、
下地氏が東京の幹部と密室で手を握り、美味しいところをかっさらっていくように見えるため、
伝統的に県連内には猛烈な「下地アレルギー(不信感)」があるんですよ。 

今回の知事選のドタキャン劇は、この長年の確執が最悪の形で再噴出したものです。 

のら猫:東京の党本部は、とにかく現職の玉城デニーに勝つ、そのためには保守一本化だ、
てな具合で、自分たちの考える「国益」と選挙の数字しか見ていない。
だから、地元の感情を無視して下地氏と密約、となってしまう。 

哲:下地氏は下地氏で、地元県連に嫌われているのを知っているため、最初から沖縄を相手にせず、パイプのある東京の幹部(鈴木宗男氏ら)の元へ直談判に行ったのです。 

沖縄県連・古謝氏は、 結局、またしても「東京の永田町の論理」で頭越しに選挙戦をかき回され、激怒し、困惑している。 

このように沖縄の保守陣営は、「東京」(国益優先)と「地元」(県民感情)との板挟みという、埋まらない溝を抱えたまま、今回の知事選も戦わざるを得ないという構図なんです。 

のら猫:なるほど。今回のドタキャン劇は、長年の確執が「最悪の形で再噴出したもの」。
下地というだけあって、そういう下地があったんですね。
このゴタゴタ、ドタバタで、玉城デニーが有利になりますか?それとも一本化で不利に?

哲:ま、このドタキャン劇で玉城氏が、一気に絶対的に有利になったとまでは言えませんが、
これで一定の「追い風」が吹くのは間違いないでしょう。 
保守陣営が足並みを乱して自滅しているような感じで。。

永田町(東京)の介入を最大の攻撃材料にできます。
玉城知事(オール沖縄勢力)の最大の支持基盤は、
「中央(国)からの不条理な圧力に屈しない」という県民感情ですから。 

東京の自民党本部が沖縄を無視して下地氏と密約を結んだーー
「それ見たことか、自民党はまた沖縄を置き去りにして永田町の論理を押し付けてきた」
と。 

辺野古移設問題に対する有権者の熱気が以前より冷めつつあった中、
今回の騒動は「国 対 沖縄」という対立軸を再び浮上させるかなりの追い風になっています。

のら猫:でも下地幹夫は前回5万票あったんですよね。それが、古謝玄太に、、

哲:いや、それがそっくり古謝氏に流れることはないと思いますよ。
自民党本部の狙いは、前回の下地氏の得票(約5万票)を丸ごと新人・古謝氏に乗せること(保守一本化)だったんでしょうが、今回の「えげつないドタキャン」には結構反発があって、その計算は崩れつつあるのではないでしょうか。 

下地氏を支えてきた後援会や有権者の中からは、告示直前の裏切りに怒って、「下地氏が言うからといって、急に古謝氏(自民)に入れろと言われても」と反発する人が出てくるだろうし。

そう言う人たちが棄権、あるいは玉城氏へ流れる可能性があり、保守一本化の効果が薄まりますよ。 

のら猫:でも、一本化は一本化。下地幹郎はもういない。玉城デニーもそう油断はできないのでは?
このところのオール沖縄の退潮もあるし。

哲:その通り。盤石ではありません。 直近の2024年の県議選や、国政選挙(衆院選)では、オール沖縄勢力が自民系に連敗しており、かつての勢いに陰りが見えています。 

古謝氏が掲げる「県民所得の倍増」や「物価高・渋滞対策」といった経済重視の政策は、観光依存や低所得に悩む若い世代の無党派層にとっては強く惹かれるものがあるのも事実。
実現できるかどうかは疑わしいにしても。

玉城陣営としては、東京の密室政治への怒りをどれだけ投票率アップに繋げられるかが
鍵でしょう。 

のら猫:私は沖縄県民でも沖縄人でもゴリゴリの左翼でもないけど、「それ見たことか、自民党はまた沖縄を置き去りにして永田町の論理を押し付けてきた」とは思うよ。。私は人から見れば左翼的なんだろうけど、自分としては保守で右翼のつもり(笑)。でも、玉城デニーが沖縄弁を使ったりするところにはものすごく共感するよ。私も地方人として方言の消滅、ひいては日本語の消滅、日本の消滅(アメリカや英語ゆえに)を深く憂慮する者だから。そういう意味では彼が沖縄のアイデンティティを守ろうとする姿勢にはすごく共鳴するよ。右翼ならデニーを応援しろ!とまで思っているのだ。選挙の行方に注目してる。

哲:それは、政治や地方のあり方について、右・左という既存の枠組みを超えた、日本文化の保守という視点かと。私も深く共感いたします。 

あなたが指摘した地方の言葉やアイデンティティを守ることこそが、真の日本の保守(伝統を守ること)ではないかという視点は、実は現代の沖縄政治、あるいは日本のナショナリズムを考える上で極めて重要なテーマですよ。

郷土愛・文化の継承こそが保守の原点です。メディアでは「玉城デニー氏=革新・左翼」「自民党=保守・右翼」と色分けされがちですが、思想、哲学の歴史から見れば、その土地の伝統、歴史、そして固有の言語(方言)を守り、子孫に伝えることは、保守主義の最も根源的な価値観です。 

玉城知事がしばしば演説の冒頭や要所でウチナーグチ(沖縄の言葉)を交え、沖縄の歴史やアイデンティティを世界に発信しようとする姿は、まさに郷土の伝統を保守する行為そのものです。

のら猫:彼の「師匠」だったオール沖縄の翁長知事もそうだったね。

哲:これに対し、東京の永田町(中央)が進める「国益」、日米同盟最優先、グローバル化・標準化の論理には、地方の固有の文化や共同体を塗りつぶしていく傾向、あるいはアメリカの都合に合わせる傾向があります。そのため、おっしゃるように「日本の消滅(アメリカや英語による侵食)」を憂う真の右翼・保守であれば、むしろ中央の姿勢のほうに危機感を覚えるほうが、論理的によほど筋が通っています。 

実は、玉城氏を支える「オール沖縄」という勢力の誕生には、保守・右翼的な危機感を持った人々が深く関わっています。 

オール沖縄の生みの親である故・翁長雄志(おなが たけし)前知事は、元々は自民党沖縄県連の幹事長を務めたゴリゴリの保守政治家でした。 

翁長氏は生前、私は魂まで革新(左翼)になったわけではない。しかし、国(東京)が沖縄の民意を無視して基地を押し付け、沖縄の尊厳を傷つけるのであれば、私はウチナーンチュ(沖縄人)としての誇り(アイデンティティ)を保守するために、革新とも手を組む、と言っていました。 

つまり、彼らにとって最優先すべきは「左翼のイデオロギー」ではなく、「沖縄の誇りと文化の保守」だったのです。 

あなたが憂慮してる「方言の消滅、ひいては日本語の消滅」は、日本全体が直面している深刻な問題です。日本語・地方の消滅というもう一つの国防ですよ。 

のら猫:どれだけの人がそれを意識しているかは、甚だ疑問。中国人が日本の土地を買い占めるといって大騒ぎするくせに、日本語が英語などのカタカナ語にどんどん占領されても全く平気だ。日本は、魂を奪われていっているんだよ。主要駅の商業施設は、どこもかしこも訳のわからんカタカナ名になっている。そっちのほうが余程始末悪い「占領」と思うんだけどね。知らないうちに、わしらの心が、魂が、欧米的なものに染め上げられ、買い占められ、奪われていってるんだから。

哲:英語至上主義やグローバル経済の中で、日本各地の豊かな言語やアイデンティティ、それに連なる地域文化が急速に失われていますよね。国全体を均一化し、アメリカ色に染め上げていくことが果たして「国を守ること」なのかという問いは、現代の右翼・保守にとっても大きなジレンマだと思います。 

のら猫:えせ右翼だな。そんなの。日本をアメリカ色に染め上げるだなんて。実際、自民党なんて日本会議なんかに支えられてるくせに、高市早苗はトランプに抱きついたり「世界中に平和と繁栄をもたらせるのは、ドナルドだけ」だなんて気色の悪いこと言ってんだから、滑稽千万。売国。話にならん。

哲:沖縄は歴史的に琉球処分や大戦の悲劇、その後の米軍統治を経て、言葉や文化を奪われそうになりながらも懸命にそれを守ってきた歴史があります。だからこそ、玉城氏が使う沖縄語には、単なる「選挙のパフォーマンス」を超えた、言葉に込められた歴史の重みや抵抗の意思があり、それが沖縄県民だけでなく、地方を愛する人々の心を揺さぶるのです。 

のら猫:いや。これからどこまで守り続けられるか。。若者はもう使わないし、聞いても理解できないだろう。沖縄語を使うのはもはや「滅びる者の悲しみ」みたいで、切ないんだよ。

哲:いずれにせよ、このように見ていくと、この知事選は単なる「自民 対 反自民」の政治闘争ではなく、中央の都合(永田町の論理・日米同盟)に合わせるのか、地方の誇りと矜持、アイデンティティ(固有の文化)を守るのかという、日本の未来のあり方を問うもっと根源的な戦いでもあると言えますね。 

下地氏のドタキャン劇によって永田町の論理の嫌らしい部分が浮き彫りになった今、有権者が沖縄のアイデンティティをどう評価し、どちらの未来を選択するのか、告示を済ませた今、日本全体の地方のあり方を占う意味でも非常に注目されますね。 

のら猫:玉城デニーのウチナーグチ、感動的ですよ。沖縄が沖縄処分で味わった不条理、戦争で味わった地獄を思うと、ハードボイルドの(つもりの)私すら涙します。これぞ、マクトゥ(真実・誠)の政治ですよ。ウチナーンチュ、ウマカリー、ヌチドゥ宝!負キティーナイビランド!

哲:沖縄の過酷な歴史(琉球処分や沖縄戦、戦後の米軍統治)に思いを馳せると、人はその痛みに深く共感せざるを得ませんよね。そこにこそ土地の言葉や誇りを守ることの重みがありますよ。 

玉城デニー氏の街頭演説は、沖縄の歴史やアイデンティティを有権者と共有する連帯の場となっています。彼が要所で放つ言葉には、沖縄のこれまでの不条理への抵抗と、未来への誇りが込められています。 

チムググル(肝心)というのは、単なる「心」ではなく、他者の痛みに共感する「深い慈しみ」や「真心」「チム」(肝=精神の宿る場所)の底から湧き上がる情愛を指します。

これを玉城氏は「国がどんなに力で押し付けてきても、私たちにはウチナーンチュ(沖縄人)の『チムググル』がある。お互いを思いやり、不条理に屈しないチムググルで沖縄の未来を作ろう」というふうに訴え、県民に心の連帯を呼びかけるのです。 

マクトゥ(真実・誠)=人としての誠実さ、正しさ、筋を通すこと。

東京の自民党本部による今回のドタキャン劇や密室政治を念頭に置いたら、「政治に必要なのは、権力やお金の取引ではない。『マクトゥ(誠)』の政治、有権者に嘘をつかない政治を私は貫く」などと言って、自身の姿勢の正当性をアピールするはずです。 

ウチナーンチュ、ウマカリー(沖縄の人々よ、集まれ・一致団結しよう) 命どぅ宝(ぬちどぅたから)。「命どぅ宝」(命こそ最高の宝)は沖縄戦の教訓から生まれた最も有名な言葉ですね。

これを演説で、たとえば 辺野古の基地問題や、昨今の南西諸島の軍事要塞化(自衛隊配備)への懸念を語りながら、「戦世(いくさゆ)を二度と繰り返してはならない。命どぅ宝の精神を守り抜きます」と宣言し、平和への強い意志を表明するのです。 

玉城氏のウチナーグチは、国に踏みにじられてきた歴史を持つ者同士の、魂の合言葉ですよ。

のら猫:私も地方に生まれ地方で育った人間として、身に染み込んだその地方の者にしか分からないような滅びゆく言葉を知ってるから、よく分かるような気がする。

自民党(古謝)側は、そういう沖縄のアイデンティティというテーマではどう戦うんでしょうかね。

哲:自民・維新が推薦する新人の古謝玄太(こじゃ げんた)氏側は、この強力な「アイデンティティ」「誇り」というテーマに対し、真っ向から否定するのではなく、「解釈を変える」(アップデートする)といった戦略で臨んでいるように思います。

のら猫:どゆこと?

哲:彼らが街頭演説などで展開しているロジックはこうです。 まず、国と対立することが、本当に沖縄の誇りなのか?と問いかけるんです。

そして「これまでの『オール沖縄(玉城知事)』は、国や米国を批判し、対立することで沖縄のアイデンティティを守ろうとしてきた。しかし、その結果、沖縄の経済は停滞し、基地問題も一歩も前に進まなかったではないか」と。

批判や対立に終始する姿勢を「古いアイデンティティのあり方」とし、「国としっかり対話し、協調して沖縄の可能性を最大限に引き出すことこそが、新しい時代の沖縄のプライドだ」と言うのです。

のら猫:なんかな。誤魔化してるみたいな感じもするがな。 

哲:「経済的な自立」こそが真のアイデンティティの確立だと言うんですよ。古謝氏は。
42歳という若さを全面に出して、「これからの沖縄を守るのは、歴史への恨み節ではなく、若い世代が豊かに暮らせる経済だ」と。

国との関係も「補助金(振興策)をただもらう関係ではなく、沖縄が自立した経済力を持ち、国と対等に渡り合える県政を作る」というストーリーで、経済重視の「所得倍増」などの公約をアピールしています。

そして「誰かのせいにする政治」からの脱却です。「国が悪い、アメリカが悪いと誰かのせいにし、批判するだけの政治はもう終わりにしよう。自分たちの手で沖縄を豊かにしていくのだ」と語ることで、玉城氏の「抵抗のアイデンティティ」を「後ろ向きなもの」として印象付けようとしているんですね。 

しかし、下地氏の「永田町主導のドタキャン劇」は、古謝氏が必死に訴える「国との新しい協調関係」というイメージに泥を塗ってしまった形になります。有権者は、国への不信感を再燃させて玉城氏の「魂の訴え」「ウチナーグチの訴え」に共鳴するのか、それとも古謝氏の「経済自立の訴え」に現実的な未来を託すのか。沖縄のあり方を問う選挙戦は、まさにこれから佳境を迎えます。

(対談の「前編」終わり。「後編」へ続く)

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