ニューヨーク・タイムズのコラムニスト
トーマス・フリードマンが
ウクライナ戦争の意外な展開、結末を予測している
このまま長期戦になると
経済制裁でロシアは痛手だが
制裁をかけた側も苦しい
ーーEUは新たに
ロシアからの原油輸入を
年末までに90%削減すると合意
これでエネルギー価格がさらに高騰
それがすでに各国が前倒しで進めている
再生可能エネルギーへの転換を
さらに加速させ
ロシアの化石燃料による収入がしぼみ
プーチンの権力も資金力も
弱体化してゆくという読み(ないし期待)
そして戦争は終わり
世界は再生可能エネルギーの新時代を迎える
記事の概略を以下に紹介しよう
The Ukraine War Still Holds Surprises. The Biggest May Be for Putin.
June 7, 2022 THOMAS L. FRIEDMAN
https://www.nytimes.com/2022/06/07/opinion/ukraine-putin.html
何事につけても人々の意見の一致することのまれな
昨今のアメリカにおいて
めずらしく一貫して支持されているウクライナ支援
気前良い経済支援と軍事支援が続いている
ほんの数ヶ月前まで
ウクライナが世界地図のどこにあるかも
大半の国民は知らなかったというのに
ウクライナ戦争は「スモー」になっている
両者共に相手を土俵の外に押し出せないまま
お互い取っ組み合いをやめるつもりもない
エネルギー価格、食料価格の高騰で、
戦争継続への支持は弱まるかもしれないが、
ウクライナが軍事的に勝利して主権を回復するまで、
あるいはプーチンと妥協にこぎつけるまで
なんとかアメリカ国民の支持が持ちこたえることを
自分はまだ期待している。目先、楽観的なのは
Michael Mandelbaumの新著 『アメリカ外交政策の4時代』
“The Four Ages of American Foreign Policy:
Weak Power, Great Power, Superpower, Hyperpower.”
を読んだから。
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トーマス・フリードマンが
ウクライナ戦争の意外な展開、結末を予測している
このまま長期戦になると
経済制裁でロシアは痛手だが
制裁をかけた側も苦しい
ーーEUは新たに
ロシアからの原油輸入を
年末までに90%削減すると合意
これでエネルギー価格がさらに高騰
それがすでに各国が前倒しで進めている
再生可能エネルギーへの転換を
さらに加速させ
ロシアの化石燃料による収入がしぼみ
プーチンの権力も資金力も
弱体化してゆくという読み(ないし期待)
そして戦争は終わり
世界は再生可能エネルギーの新時代を迎える
記事の概略を以下に紹介しよう
The Ukraine War Still Holds Surprises. The Biggest May Be for Putin.
June 7, 2022 THOMAS L. FRIEDMAN
https://www.nytimes.com/2022/06/07/opinion/ukraine-putin.html
何事につけても人々の意見の一致することのまれな
昨今のアメリカにおいて
めずらしく一貫して支持されているウクライナ支援
気前良い経済支援と軍事支援が続いている
ほんの数ヶ月前まで
ウクライナが世界地図のどこにあるかも
大半の国民は知らなかったというのに
ウクライナ戦争は「スモー」になっている
両者共に相手を土俵の外に押し出せないまま
お互い取っ組み合いをやめるつもりもない
エネルギー価格、食料価格の高騰で、
戦争継続への支持は弱まるかもしれないが、
ウクライナが軍事的に勝利して主権を回復するまで、
あるいはプーチンと妥協にこぎつけるまで
なんとかアメリカ国民の支持が持ちこたえることを
自分はまだ期待している。目先、楽観的なのは
Michael Mandelbaumの新著 『アメリカ外交政策の4時代』
“The Four Ages of American Foreign Policy:
Weak Power, Great Power, Superpower, Hyperpower.”
を読んだから。
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ジョンズ・ホプキンズ大学の名誉教授
マイケル・マンデルボームによると
アメリカの外交は
セオドア・ルーズヴェルト流の
国益・安全保障の促進と
ウッドロウ・ウィルソン流の
アメリカの価値の促進の間で揺れてきた。
この二つは相対立することも多いが、
一致することもある。
その時は国民の支持も幅広く、
長続きすると言う。
第2次世界大戦でも冷戦でもそうだった。
そして今、ウクライナ戦争で再びこれが
起きているようだと言うのである。
でも、いつまで?となると、
それはどうなるかわからない。
戦争では予期せぬ事態も起きるのだ。
ウクライナ戦争にしてもしかり。
戦争のコストが増すにつれ、意見も分かれてくる。
アメリカで、あるいは欧州の同盟諸国の間で。
いくらアメリカの国益、アメリカの価値と言っても、
そこまでしてウクライナを支援することはないとか、
全面的勝利まで、つまり
ロシア軍をウクライナから追い出すまで、
ウクライナを支援し続ける経済的な余裕はないと言って。
あるいは、
全面的勝利をめざすことは戦略的に言っても無理、
プーチンは、全面的敗北に直面すれば
核兵器を使いかねないから、と言って。
フランスのマクロンが
「ロシアに屈辱を味合わせてはならない」
と言ったことにその兆しがすでに窺える。
これにはゼレンスキーが激しく反発したが。
独立戦争以来、アメリカのどの戦争にも
国内の反対意見がつきものだった。
アメリカの最も偉大な最高司令官ーー
ワシントン、リンカーン、フランクリン・ルーズベルトの
戦時大統領としての共通点は、
戦争に勝つという目標に最後まで
国を繋ぎ止めることができたことだった
とマンデルボーム。
それがバイデン大統領の課題でもある。
同盟国の間でもウクライナとの間でも
「勝利」が何を意味するか
意思の統一がないとなれば
なおさらである。
勝利とは、今ウクライナが言っているように、
ロシアが占領した土地をすべて取り返すことなのか。
NATOの助けを借りてロシア軍に打撃を与え
プーチンに占領した土地の一部を返還させることなのか。
しかし、プーチンが妥協を拒んだらどうする?
プーチンがウクライナを少しずつ弱めて
消滅させるつもりならどうする?
南北戦争と第2次世界大戦という
アメリカの最も重要な二つの戦争において
「我々が目指したのは全面勝利だった。
バイデンや同盟国にとって問題は今回
プーチンに対し全面勝利は目指せないことである。
そうすれば核戦争となるかもしれないから。
しかし、全面勝利のようなものでしか、
プーチンがウクライナに
永久に血を流し続けさせないようにすることは
できないのかもしれない」
開戦から100日余り。
この戦争がどのようにして終わるかは
誰も予測のできないところである。
これはプーチンの頭の中で始まった戦争。
プーチンが終わりにしたいと思わないと
終わらない戦争のようでもある。
プーチンはおそらく
自分が主導権を握っているつもりだろう。
西側の民主主義国家より自分の方が打たれ強いからと。
しかし大きな戦争は不思議なもの。
どんな形で始まったものでも、
まったく予想外の終わり方をしたりする。
マンデルボームが注目したのはチャーチルの言葉。
「大いなる戦いは、勝つにせよ負けるにせよ、
物事の流れをすっかり変え、
万人が従うべき新しい価値の基準、
新しいムード、新しい雰囲気を
軍隊や国に生み出すことがある」。
(チャーチル:『マールバラ公伝』)
つまり、戦争は歴史の流れを変えることがあるということ、
そして大いなる戦いが往々にして
戦争の行方そのものを決するということ。
ドンバス地方の支配をめぐる戦いが
そのようなものになる可能性を秘めている
とマンデルボーム。(*)
EU27カ国は世界最大の経済圏。それがすでに
ロシアとの貿易とロシアへの投資の大幅削減に動いている。
5月31日にはロシアからの原油の輸入の
年内90%削減に合意した。
これはロシアに痛手だが
すでにガソリンや天然ガスが天文学的な価格となっている
EUの消費者や製造業にとっても大打撃。
時あたかも太陽光や風力の再生可能エネルギーは
すでに化石燃料との価格競争力をつけている。
自動車産業は世界中で電気自動車や
新しい電池の生産を大幅に増やしている。
これでロシアからの供給が減った分を
短期的に補うことはできない。
しかし、ウクライナ戦争のために1年、2年と
エネルギー価格が異常な高騰を続ければ
「大規模な投資の変化が起き、
電気自動車や送電、蓄電へと向かい、
化石燃料依存から再生可能エネルギーへの
シフトが起きる。
すでに各国、各社、脱炭素化のカレンダーを
大きく前倒ししている。」
(トム・バーク、シンクタンク「E3G」)
Tom Burke, director of E3G, Third Generation Environmentalism
しかもEU27カ国のうち19カ国では
地政学的な脅威に備えて
2019年からすでに再生可能エネルギーの促進を強化し、
2030までの化石燃料生産の計画縮小を進めている。
(report published last week by the Center for Research on Energy and Clean Air, and Ember)
19世紀の海の戦争では帆船から蒸気船への転換が加速した。
第1次世界大戦では石炭から石油への転換。
第2次世界大戦を経て原子力が生まれた。
いずれも戦争で技術革新が起きて
民生へとそれが流れ新しい時代に突入した。
ウクライナ戦争では
エネルギーの革新が起きているわけではないが
その必要性を浮き彫りにした。
大きな変革をもたらす可能性も秘めている。
(article in McKinsey Quarterly )
ウクライナ戦争では、
うっかり核戦争が起きて
地球が破滅なんてことにならなければ、
期せずして地球の持続可能性を後押し
という結果になるかもしれない。
そしてそのうちプーチンの
金と権力の源も縮んでしまうかもしれない。
皮肉と言えば皮肉である。
マイケル・マンデルボームによると
アメリカの外交は
セオドア・ルーズヴェルト流の
国益・安全保障の促進と
ウッドロウ・ウィルソン流の
アメリカの価値の促進の間で揺れてきた。
この二つは相対立することも多いが、
一致することもある。
その時は国民の支持も幅広く、
長続きすると言う。
第2次世界大戦でも冷戦でもそうだった。
そして今、ウクライナ戦争で再びこれが
起きているようだと言うのである。
でも、いつまで?となると、
それはどうなるかわからない。
戦争では予期せぬ事態も起きるのだ。
ウクライナ戦争にしてもしかり。
戦争のコストが増すにつれ、意見も分かれてくる。
アメリカで、あるいは欧州の同盟諸国の間で。
いくらアメリカの国益、アメリカの価値と言っても、
そこまでしてウクライナを支援することはないとか、
全面的勝利まで、つまり
ロシア軍をウクライナから追い出すまで、
ウクライナを支援し続ける経済的な余裕はないと言って。
あるいは、
全面的勝利をめざすことは戦略的に言っても無理、
プーチンは、全面的敗北に直面すれば
核兵器を使いかねないから、と言って。
フランスのマクロンが
「ロシアに屈辱を味合わせてはならない」
と言ったことにその兆しがすでに窺える。
これにはゼレンスキーが激しく反発したが。
独立戦争以来、アメリカのどの戦争にも
国内の反対意見がつきものだった。
アメリカの最も偉大な最高司令官ーー
ワシントン、リンカーン、フランクリン・ルーズベルトの
戦時大統領としての共通点は、
戦争に勝つという目標に最後まで
国を繋ぎ止めることができたことだった
とマンデルボーム。
それがバイデン大統領の課題でもある。
同盟国の間でもウクライナとの間でも
「勝利」が何を意味するか
意思の統一がないとなれば
なおさらである。
勝利とは、今ウクライナが言っているように、
ロシアが占領した土地をすべて取り返すことなのか。
NATOの助けを借りてロシア軍に打撃を与え
プーチンに占領した土地の一部を返還させることなのか。
しかし、プーチンが妥協を拒んだらどうする?
プーチンがウクライナを少しずつ弱めて
消滅させるつもりならどうする?
南北戦争と第2次世界大戦という
アメリカの最も重要な二つの戦争において
「我々が目指したのは全面勝利だった。
バイデンや同盟国にとって問題は今回
プーチンに対し全面勝利は目指せないことである。
そうすれば核戦争となるかもしれないから。
しかし、全面勝利のようなものでしか、
プーチンがウクライナに
永久に血を流し続けさせないようにすることは
できないのかもしれない」
開戦から100日余り。
この戦争がどのようにして終わるかは
誰も予測のできないところである。
これはプーチンの頭の中で始まった戦争。
プーチンが終わりにしたいと思わないと
終わらない戦争のようでもある。
プーチンはおそらく
自分が主導権を握っているつもりだろう。
西側の民主主義国家より自分の方が打たれ強いからと。
しかし大きな戦争は不思議なもの。
どんな形で始まったものでも、
まったく予想外の終わり方をしたりする。
マンデルボームが注目したのはチャーチルの言葉。
「大いなる戦いは、勝つにせよ負けるにせよ、
物事の流れをすっかり変え、
万人が従うべき新しい価値の基準、
新しいムード、新しい雰囲気を
軍隊や国に生み出すことがある」。
(チャーチル:『マールバラ公伝』)
つまり、戦争は歴史の流れを変えることがあるということ、
そして大いなる戦いが往々にして
戦争の行方そのものを決するということ。
ドンバス地方の支配をめぐる戦いが
そのようなものになる可能性を秘めている
とマンデルボーム。(*)
EU27カ国は世界最大の経済圏。それがすでに
ロシアとの貿易とロシアへの投資の大幅削減に動いている。
5月31日にはロシアからの原油の輸入の
年内90%削減に合意した。
これはロシアに痛手だが
すでにガソリンや天然ガスが天文学的な価格となっている
EUの消費者や製造業にとっても大打撃。
時あたかも太陽光や風力の再生可能エネルギーは
すでに化石燃料との価格競争力をつけている。
自動車産業は世界中で電気自動車や
新しい電池の生産を大幅に増やしている。
これでロシアからの供給が減った分を
短期的に補うことはできない。
しかし、ウクライナ戦争のために1年、2年と
エネルギー価格が異常な高騰を続ければ
「大規模な投資の変化が起き、
電気自動車や送電、蓄電へと向かい、
化石燃料依存から再生可能エネルギーへの
シフトが起きる。
すでに各国、各社、脱炭素化のカレンダーを
大きく前倒ししている。」
(トム・バーク、シンクタンク「E3G」)
Tom Burke, director of E3G, Third Generation Environmentalism
しかもEU27カ国のうち19カ国では
地政学的な脅威に備えて
2019年からすでに再生可能エネルギーの促進を強化し、
2030までの化石燃料生産の計画縮小を進めている。
(report published last week by the Center for Research on Energy and Clean Air, and Ember)
19世紀の海の戦争では帆船から蒸気船への転換が加速した。
第1次世界大戦では石炭から石油への転換。
第2次世界大戦を経て原子力が生まれた。
いずれも戦争で技術革新が起きて
民生へとそれが流れ新しい時代に突入した。
ウクライナ戦争では
エネルギーの革新が起きているわけではないが
その必要性を浮き彫りにした。
大きな変革をもたらす可能性も秘めている。
(article in McKinsey Quarterly )
ウクライナ戦争では、
うっかり核戦争が起きて
地球が破滅なんてことにならなければ、
期せずして地球の持続可能性を後押し
という結果になるかもしれない。
そしてそのうちプーチンの
金と権力の源も縮んでしまうかもしれない。
皮肉と言えば皮肉である。
ありがとうございます! m(_ _)m
(*)今ウクライナのドンバス地方で起きている
ウクライナとロシアの戦いはアメリカ史における
3つの大きな戦いを思い起こさせる。(マイケル・マンデルボーム)
Decisive Battles, Past and Present
The ongoing battle between Ukraine and Russia in Ukraine’s Donbas region recalls three great battles in the history of the United States.
01 Jun 2022
m(_ _)m
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