金正恩は改心したのか? 「半島は春の真っ盛り」 〜差し出された手 2


– 私はいつ越えられる?

– 今でしょ!


金正恩本人も言ったように「高鳴る胸」といおうか「弾む心」といおうかはたまた「心のときめき」といおうか、この、目の前で繰り広げられ歴史的な出来事に、興奮と感動を抑えきれなかった人も多いはず。

「文大統領にわざわざ分界線にまで出迎えていただいたことにとても感動しています」(金正恩)

「ここまで来られたのは、金委員長の非常に大きな勇断があったお陰だと思います」(文在寅)

金:いいえ、とんでもないです。
文:歴史的な瞬間を作りました。
金:お会いできて嬉しいです。
文:こちらにお立ちになりますか?

そしてそのあとがこうだったという:

文「私はいつ頃、北側に行けるのだろうか」
金「それでは今、越えていきましょうか?」

さらに:

「今回の儀仗隊は略式なので惜しい。青瓦台(韓国大統領府)に来られたら、これよりずっといいのをご覧にいれられる」

金:「そうですか?大統領が招待してくださるのなら、いつでも参ります」

私は歴史のある場面を思い出していた。

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写真はフランスのミッテラン大統領と西ドイツのコール首相。
第1次世界大戦(1914-18)で、独仏双方に30万人以上、計70万人の死者を出した激戦地ヴェルダン。その無名戦士の墓前で手をつなぐ両首脳。
開戦から70年経った1984年の出来事だった。

「そういう予定はまったくなくて、ミッテランが突然私の手を握り、
お互い数分間ずっと黙って手を握り合っていた」(コール)

「手を差し出したらコールが握り返してくれた」(ミッテラン)

自然とそうなったというのだ。予め筋書きを台本に書いていたわけではなく。
先週金曜日の板門店もそうだったように見受けられた。

そのときのドイツとフランスの共同宣言にはこうある。

「両国は歴史から教訓を学んだ。ヨーロッパは我々の共通の祖国であり、我々は偉大なヨーロッパの遺産を共に受け継いでいる。我々は共に共通の未来に向かう。」

「我々は和解し、お互いを理解し、友人となった。我々は友情と共に平和と理性と協力の道を共に歩み、後戻りはしない」

幾度となく戦火を交えてきた独仏だが、確かにその後、後戻りはしなかった。

はてさて、韓国と北朝鮮はどうなのか?

コールとミッテランは自然と手をつないだというが、文在寅を「それでは今」と北側へ境界線を跨らせた金正恩も、その場でのとっさの思いつきならなかなかのもの。文在寅の反応で見る限り、これは事前に打ち合わせてのことではなかったようだ。フランスのフィガロ紙は「即興のバレー」と評した。

半島の南北は、コールとミッテランというより、アデナウアーとド・ゴール以前。なにしろ厳密にはまだ朝鮮戦争(1950~)が続いているという休戦状態。これが東アジアが平和と安定に向け大きく様変わりする一歩であってほしい。

 ランス大聖堂 1962年

アメリカが侵略しないと約束するなら核を放棄すると金正恩。

38度線を越えてからの金正恩と文在寅のやりとり(これも台本などなく即興)を読むと、確かにこれまでと状況が一変しているように思えてくる。何よりも同じ民族なのだ。民族衣装とアリランで気分も高揚。言葉のはしはしに、これまでとは違う、決意を読み取ってしまう。

「対決の歴史に終止符を打ちに来た」(金正恩)

金:大統領が我々のことで開催されるNSC(國家安全保障会議)に参加するため、早朝に寝そびれることが多かったそうですが、早朝に起きるのが習慣になっているのでないでしょうか(笑)。
文:金委員長が韓国特使団が訪朝した際に、先にそのお話されたので、これから足を伸ばしてぐっすり寝られます。
金:大統領が朝までぐっすり眠れるように私が確認します。わずか200メートルを来るのに、どうしてこんなにも遠く感じたのか、またなぜこんなに難しかったのか思いました。最初は平壌(ピョンヤン)で文大統領に会うことになると思っていましたが、ここで会えたのはより良かったと思います。対決の象徴となっている場所で多くの方が期待を寄せて見守っています。ここに来ながら、失郷民(北朝鮮に故郷を持ち、朝鮮戦争で故郷に戻れなくなった人々)たちや脱北者、延坪島の住民など、いつわが軍の砲撃が飛んでくるかと不安に駆られていた方々も、本日の私たちの対面に期待を寄せている姿を見てきました。この機会を大切にし、南北間の傷が癒されるきっかけになってほしいです。分断線(軍事境界線)はそんなに高くないので、多くの人が踏み跨いでいたら無くなるのではないでしょうか。
・・・
金:文大統領が来られたら、正直、心配になる部分が、私達の交通(道路事情)が整っておらず、不便に思われるかもしれないというところです。平昌五輪に行ってきた方たちによると、平昌に向かう高速鉄道(KTX)がとても良いとのことでした。そんな南側の環境にいて、北側に来られるとなると、とても恥ずかしいかもしれません。私達も準備をし、大統領が来る際に不便に思われないようにしたいです。
・・・
文:…金委員長の大きな勇断のおかげで、10年間途絶えていた血脈を今日再び、つなぎました。
金:期待の分だけ、懐疑的な見方もあります。大きな合意をしておいて、10年以上実践することができませんでした。今日の会談も良い結果がでるのかと懐疑的な見方があります。短い時間歩いて来るあいだ、本当に11年もかかったのかと考えました。そんな私達が11年間できなかったことを100日あまりの間に、せっせと行ってきました。固い意志で共に手を取り合っていけば、今よりも悪くなることはないでしょう。…

金:金与正副部長の部署で、万里馬速度戦という言葉を作りましたが、南北統一の速度としましょう。(笑い)(任鐘ソク大統領秘書室長が「薄い氷の上を歩く際に、氷を割らないためには、速度を遅らせてはならないという格言がある」と口を添えた)
文:過去を振り返る場合、一番大事なのは速度です。
金:今後は頻繁に会いましょう。これからは固く決心し、また原点に戻ることがあってはなりません。期待に応え、良い世の中を作っていきましょう。これからは私達もしっかりとやります。
・・・
金:対決の歴史に終止符を打とうとやって来ましたし、私達のあいだにひっかかる問題を、大統領と膝を突き合わせて解決しようとここまで来ました。必ず、良い未来が来るという確信を持つに至りました。
文:朝鮮半島の問題は私達が主人です。そうでありながらも、世界と共に進むわが民族にならなければなりません。私達の力で導き、周辺国が付いて来られるようにしなければなりません。

(訳は冒頭に引用した李創建氏のフェイスブック投稿より)

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『差し出された和解の手』
http://noraneko-kambei.blog.so-net.ne.jp/2015-07-31-1

もう一つの『乾杯と完敗』
http://noraneko-kambei.blog.so-net.ne.jp/2015-05-06

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フェイスブックでの対話から:

のら猫:東アジアが大きく様変わりするぞと私は興奮しているのですが、これは北朝鮮の大謀略だという人もいますね。

核実験場の廃棄は「空手形」?
損傷が激しくてもう使えない状態の実験場とも言われる。
ならば廃棄して失うものは何もない。

北朝鮮が破棄約束した核実験場、すでに「使用不能」か
ロイター
https://jp.reuters.com/article/northkorea-missiles-testing-idJPKBN1HY0EZ?rpc=122

南北首脳会談「対話全文」から見えた金正恩の野望と対日方針
近藤大介/現代ビジネス
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55504

のら猫:「いい夢見させてもろた」でもいいから、しばらくは融和の流れが続いて欲しい。

トランプは:

「ミサイル発射に核実験という大変な一年が過ぎて、北朝鮮と韓国の歴史的な会談。いいことが起きている。これからどうなるかは分からないが!」

「朝鮮戦争が終結へ!アメリカとその偉大な国民は、いま韓国で起きていることをたいへん誇りに思うべきだ」

「我が良き友、中国の習近平の素晴らしい働きのこともどうか忘れないで。アメリカを大いに助けてくれた。特に北朝鮮との国境で。彼がいなければもっと時間がかかってもっと大変だっただろう」

のら猫:トランプは先に金正恩のことを「非常にオープンで、非常に尊敬すべき立派な人(very honorable)」とも発言している。何かが醸成されつつある情勢。

お友達:金正日の時代に金大中が太陽政策で訪朝して経済支援を行い、ノーベル平和賞をもらいましたが、一時的な緊張緩和はあっても結果的には北朝鮮は核開発を進め軍事的な対立構造も変わっていません。
先日のNHKスペシャルを見て思ったのですが、金正恩は世襲の際に後ろ立てがなく、経済制裁に同調する中国に対しても疑心暗鬼で、経済制裁と孤立を打破するために今回一番弱い輪を打つ戦略で、韓国との関係改善を図ったのは確かでしょう。

のら猫:そこはおだてるというか、後押しすることが大切だと思う。これまで散々これ以上ないというくらいの悪態をつきあい、軍事衝突の一歩手前という「チキンレース」をやった同士。相手が(少なくとも表面上)平和、融和へのやる気を見せているのだから、どんどんやる気にさせなければ。相手の謀略だと言うのだったら、騙されたふりをしてでも。
そこが日本の政治家のだめなところ。アメリカのブッシュもだめだった。北朝鮮は「悪の枢軸」と言って、核開発に追い込んだ。今は、イランに対して喧嘩を売っている。

お友達:今回の関係改善が恒久的な南北統一や平和に繋がるかはまだ米国との交渉があるので、不確定だと思います。特に核開発の完全凍結はどういう枠組みで実作業を進めるかが大きな問題だと思います。
N スペを見る限りでは金正恩は民衆の支持を得るために市場経済を導入し始めているようだし、韓国や中国との関係改善は経済成長のために韓国中国の資金と技術を取り込みたいという思惑があるのでしょう。
金正恩の政策は自らの独裁政権延命が第一の目的で行っていることは確か。今回の会談で韓国の文在寅にとっては南北統一という悲願に一歩近づいたと考えます。人気取りにも寄与するのは確かですが、金大中の太陽政策の結末を考えると、トランプとの会談の結果次第では金正恩が再度方針転換をする可能性は残り、やはり平和の実現はまだ不確定だと思います。結局、金正恩の政策に周りの国が振り回されている。

のら猫:いずれにせよ今後どうなるか楽しみ。分断され戦争までしてきた両国が同じ民族、ふたたび一つにという気持ちに突き動かされれば、あれよあれよと歴史は動いていくと思います。それに水を差してはいけませんよね。金正恩が極悪人で大謀略をかましていると言う人も、騙されたふりをして金正恩をおだてていればいいのです。思いがけない結果につながると思います。
金正恩、薄氷を割らずに進むには速度が決め手という意味のことを言っているところが興味深い。ソビエトや共産圏の崩壊が、人に予測する余裕すら与えずに、あれよあれよと進んでいったことを思い出したい。

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