トランプがイランと「最終段階」
返答待ちの状態だという。
先週の訪中、習近平との首脳会談を経て
いろいろと動きを見せている。
トランプ:「イランについては最終段階に入っている」
「適切な答えが得られなければ事態は急速に進む。われわれの準備は整っている」
「合意に至るか、若干嫌なことをするかだが、そのようにならないことを願っている」
提案への回答次第では軍事攻撃を再開すると脅すトランプ。
これまでは「イランに地獄がふりかかる」だの「一つの文明が一夜でそっくり滅びる」だの、
イランの発電所を全て破壊するだの、あらゆる橋を破壊するだの、
やたら最大級に恐ろしげなことを言って言葉だけで終わっており、
今度は控えめに
「若干嫌なこと」
などと言って却って凄みをきかせようとしたつもりか。
しかし、イラン議会のガリバフ議長:
「わが国の軍は停戦という機会を最大限使い、軍事力を再建してきた。
軍は敵を驚かせるほどの即応態勢を整えている」
トランプ:「皆『中間選挙があるからトランプ大統領は急いでいる』と思っているが、
そんなことはない」
そんなことはない、なんてことを説得材料も掲げずにわざわざ口にするから、
余計そうだとわかる。
中間選挙までに何か成果を上げなくてはいけないのに、、と焦っている。
支持率も2期目これまでで最低水準。
トランプ氏支持率35%、今任期でほぼ最低水準 共和党内でも不満拡大=調査
ロイター 2026年5月20日 https://jp.reuters.com/world/us/NLET4U3NK5IYHJNY3P4HLXACXE-2026-05-19/
前回も書いたが、
敵を粉砕、我々が勝った、圧勝だ、、
勝った勝ったといいながらいつまでたっても終わらない。
取引は好調、うまくっている、イランは合意したがっている、、
といい続けて、合意とやらはいつまでたっても実現しない。
「瀬戸際」だとイランのことを言っているトランプなのだが
「瀬戸際」とは自分のことだ。
「まさに瀬戸際だ。適切な答えが得られなければ事態は急速に進む。
われわれの準備は整っている」
「適切な答えを得なければならない。100%完璧で、よい答えでなければならない。
もし得られれば、多くの時間とエネルギー、そして最も重要なこととして多くの命が救われる」
「100%完璧で、よい答え」、、あまりにも高望みのトランプ。
相手を追い詰めているつもりが、
引き下がれないところに自分で自分を追い込んでいる。
トランプの言う「100%完璧」とは、イランが核開発を放棄し、ホルムズ海峡を開放し、、
イランがありえないと言ってきたこと。
ウラン濃縮をやめろ、核物質を差し出せなんて,飲めるわけがない。
イランはNPT核拡散禁止条約に加盟し、国際原子力機関IAEAの監視を受け入れている。
核兵器の開発の意志はないと主張。
確かに「核の平和利用」は条約で認められた非核兵器所有国の「奪うことのできない権利」だ。
ただ、イランは過去にIAEAへの申告を怠ることがあったり非協力的だったり。
IAEAも今、核兵器を開発している証拠は確認できないと言うだけで、
イランに核兵器を開発しようという意図はないとまでは言い切っていない。
ガリバフ議長(イラン議会):
「ここ1か月ほど停戦が続いているが、敵の動きから新たな戦争の機会を探っていることがうかがえる。彼らは依然としてイランが降伏することを望み、封鎖や経済的な圧力、それに軍事的な緊張を高めることで外交の場で過剰な要求をイランにのませることができると誤解している」
過剰な要求とは核の放棄。この点ではイランは決して譲らない。
「わが国の軍は停戦という機会を最大限使い、軍事力を再建してきた。
軍は敵を驚かせるほどの即応態勢を整えている」(ガリバフ議長)
ニューヨークタイムズもイランが停戦中、態勢を立て直したと伝えている。
トランプはイランのミサイル戦力を70%破壊した、敵は壊滅、と言っていたが
イランは移動式ミサイル発射台の7割を保持。
ホルムズ海峡近くのミサイル拠点33箇所のうち30箇所が依然、使用可能。
ミサイルの備蓄も大半が残っているというのが米軍の見立てだ。
来るなら来い、戦闘再開は望むところだと言わんばかりのイラン。
その自信の陰に中国とロシアの支援。
かくして、アメリカもイランも、再び戦闘再開に突き進む。
イランは孫子の兵法「軍争篇」の構えだ。
近きを以て遠きを待ち、佚(いつ)を以て労を待ち、飽を以て飢を待つ。此れ力を治むる者なり。
(以近待遠、以佚待勞、以飽待饑、此治力者也)
いわゆる非対称戦、遠征して来る強国は得てして勝てないもの。
「軍形篇」には
「善く守る者は九地の下に蔵れ、善く攻むる者は九天の上に動く、
故に能く自ら保ちて勝を全うするなり」とも言う
(善守者、藏於九地之下、善攻者、動於九天之上、故能自保而全勝也)
孫子は航空機まで想定していたわけではなかろうし、
「九天の上に動く」は比喩的な表現で、アメリカのことではない。
しかし、広大な国土、砂漠地帯もあれば、西、北、東に山岳地帯、深く張り巡らせた地下壕、
まさに「九地の下にかくれ」のイランである。
能く自ら保ちて勝を全うするなり。
< 台湾問題には適切に対応しなければ、中国とアメリカの紛争にも発展しかねない >
中国側の発表では先週の米中首脳会談で習近平からそのような警告を受けたというトランプ。
帰国したトランプから、その台湾を巡って新しい動きである。
習近平に動かされているトランプ。
「よく戦う者は、人を致して、人に致されず」(孫子兵法「虚実篇」)
現職のアメリカ大統領と台湾総統の直接対話が行われれば、
1979年に台湾と断交して以来、初めてのこととなる。
トランプ:「台湾をめぐる状況については、とてもうまく対処できている。
中国の習近平国家主席とはすばらしい会談ができた。台湾の問題について取り組んでいく」
例によって、お得意の負け惜しみ。
先週の米中首脳会談のあとも、台湾に武器を売却するかどうかをめぐり
「私が話さなければならないのは台湾を率いている人だ」と言っていた。
習近平の言葉がよほどガツンと来たと見える。
これまでアメリカが続けてきた台湾への武器売却。
習近平に「トゥキディデスの罠」(後述)を言われてトランプ、
方針を改めると言うことか?
動かしているのは習近平、動かされているのはトランプ。
孫子の兵法「虚実篇」に言う
「善く戦う者は、人を致して人に致されず」(善戰者、致人而不致於人)
いくさ上手は、敵を動かし、敵に動かされず、ということ。
台湾統一には武力も辞さずと言っている習近平。
これまでCIAなどアメリカ政府内には中台の武力統一は2027年までという見方もあった。
中国が確認していることではないが。
トランプが武器の売却をやめる?!
台湾の半導体(世界のシェア60%、先端的な半導体だと90%)をあっさり中国に
持っていかれるのか?
中国はまさに孫子の兵法を地でいく「戦わずして勝つ」だ。
北京での首脳会談
習近平は穏やかな表情、ないしは、ほとんど無表情
トランプは表情が固い
握手の瞬間、トランプが習の体を引き寄せようとしているようにも見えるが
習はあくまで直立の自然体
握手の時の重心がどこにあるか。注目点でもある。
『悪趣味な握手見な 権力者たちの力関係がのぞく』
https://noraneko-kambei.com/2017/02/17/3530/
「トゥキディデスの罠を回避できるでしょうか?」
習近平:
「全世界が私たちのこの会合に注目しています。現在、この1世紀に見られなかったような変化が世界中で加速しています。そして世界情勢は流動的で激動の中にあります。世界は新しい分岐点に差し掛かりました。中国とアメリカは『ツキディデスの罠』を克服できるでしょうか?そして大国間の関係の新しいパラダイムを作り上げ、共に手を携えて世界の課題に立ち向かい、世界をより安定したものにできるでしょうか?私たちは人民の利益のために、そして人類の未来のために、2カ国の関係のために、より明るい未来を一緒に築いてゆくことができるでしょうか?これらは歴史、世界、人民にとって極めて重要な課題です。これらはあなたと私が主要国の指導者として答えなくてはならない課題です。」
トランプ・アメリカに穏やかに語りかける習近平の中国
優しく諭しているようでもあるが
無表情で冷徹な感じもして
案外これこそ凄みのきいた脅しである
100年の間見ることのなかった変化と言うが
これはアヘン戦争前の清国の皇帝がイギリスに対して見せていた上から目線を
200年ぶりに中国が取り戻したということではないのか。
200年ぶりについに中国が欧米より優位に立ったのだ。
そこまでの大きな歴史的な出来事だった今回の米中首脳会談と思う。
アメリカがドルと戦争で世界の覇権を握ったのに対し
中国はひたすら経済だった。
習近平は2013年から「一帯一路」なる巨大経済圏構想を推進
世界を「一帯一路」なる陸と海のシルクロードでつなぎ
インフラ整備と経済支援を続けてきた。
「1世紀見られなかったような世界の変化がいま加速している」と習近平。
トランプに面と向かって言ったのだ。
具体的には
「中国が急速に興隆し、アメリカが急速に衰退している」
と言いたいのだ。
トランプさん、あなたが大統領のときに、その変化が加速してますよ
ということでもあるんだがトランプは、
「居眠りジョー・バイデンとバイデン政権の4年間に
我々がこうむった大変な被害のこと。
それに関しては100%正しい」
責任転嫁も甚だしい。まだ分かっちゃいない。
そして終始無表情の習近平がやや微笑みながら言ったのがこれ
「中国とアメリカはいわゆる『トゥキディデスの罠』を乗り越えることができるでしょうか?」
『トゥキディデスの罠』とはハーバードの歴史家が提唱した戦争のパターンーー
戦争はたいてい、既存の覇権国と新興国との間に起こるものという説である。
スパルタとアテネがそうだった。その歴史を記したのがトゥキディデス。
ドイツだって新興国として覇権国イギリスやアメリカと戦争。
過去500年で16回出現したトゥキディデスの罠だが
その罠を回避できたのはそのうち4回だけ。
日本は日清・日露と太平洋戦争の2回、この罠に掛かって戦争をした。
(なぜかアリソンは日清・日露をひとつにまとめて勘定している)。
習近平の穏やかな顔の裏に隠された脅し
それはーー
過去1世紀起きたことのないような変化は
受け入れなくてはいけません
中国の興隆に逆らってはいけません
逆らうと武力紛争になりますよ
ということだったのだ。
習近平のトランプへの忠告:
中国の台頭とアメリカの没落は仕方ないこと
我慢しなさい
受け入れなさい
アメリカが中国に屈した日
トランプが習近平に三跪九叩頭
10年前の発言と比べてみるといい
君子は豹変す
てか?
2015:「中国!我々の友人なんかじゃありませんよ!」
2016:「我々の習主席との関係はすばらしいものだ。前から仲良くやってきた。
彼はすばらしい男だ。私の友達だ。」
「我々には友情がある。とてもいい仲だ」
2016:「中国にこれ以上我々の国への凌辱を許し続けるわけにはいかない。
彼らがやっているのはそれだ。」
2026:「我々は中国と非常にうまくやっている。中国との協力は非常にうまくいっている」
2016:「中国は我々の会社を略奪した。我々の知的財産を盗んだ」
「アメリカはもはや不公正な慣行に目をつぶるわけにはいかない。
大掛かりな知的財産の窃盗も含め」
「世界の歴史の中でこれほどの知的財産の窃盗は初めてだ」
2026:「知的財産の窃盗は我々だってやっている。でも、彼らは50年やってきた」
2020:「我々は中国に狙いを定める。彼らには一切依存しない。
アメリカの商取引を中国から引き上げる。」
2026:「世界のトップ企業30社のリーダーたち。中国でのビジネスがあるんだ。その大半が中国でビジネスをしている。でも多分もっとやりたいだろう。私も彼らにはもっとやってもらいたい。中国は何千億ドルという投資をきょうあの部屋にいた人たちに対して行いたいだろう。
2020: 「中国に対して我々ほど厳しい政権はこれまでなかった。」
「私以上に中国に対して厳しい者はこれまでいなかった。中国に対して一番厳しいのが私だ」
2026:「あなた方の友人であることは光栄であります。
アメリカと中国の関係はこれまでよりさらに良くなります。」
「ここでアメリカ国民と中国国民との豊かで永続的なきずなに祝杯を上げたいと思います。
これは極めて特別な関係であります」
イランの防空システムは米軍機を察知、追跡、阻止できると言われ、
空爆再開を思いとどまったというトランプ。
アメリカはすでに負けているという見方もある。。
しかし、ヘグセス国防長官が以前番組司会者をやっていたFoxNewsの5月21日の世論調査では
65%が、イラン戦争は「アメリカが勝ちつつある」と答えている。。
人民元やBRICSのものなど、ドル以外でのの決済が増え
ペトロ・ダラーの覇権も終わりか
アメリカの国債はこれから誰が引き受けるのだろう
アメリカの赤字はどうなるのだろう
こうして習近平の中国は孫子の兵法を字でいく「戦わずして勝つ」。
結局、北京で行われた米中首脳会談
中国は孫子の兵法「謀攻篇」に言う
百戦百勝は善の善なる者に非ざるなり。
戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり
(百戰百勝、非善之善也、不戰而屈人之兵、善之善者也)
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